早くから企業向けにコンテンツのASPサービスを行ってきたタイトーは、2003年7月に、合計で7ジャンルの「デジタルノベルティアプリ」を本格的にリリースした。
同社がゲームメーカーとして培ってきた長い歴史、そして、デジタルノベルティに関する独自のユーザーアンケート調査結果を中心に解説。
Vアプリのビジネス活用開始を機に、さらに発展していくアプリビジネスについて考察し、タイトーのアプリビジネス戦略について紹介する。




「企業に、販促用のノベルティとして携帯アプリを採用していただくためには、まず、3キャリアすべてに対応していることが必須条件です」と語るのは、今年で創業50年を迎える老舗ゲームメーカー、タイトーのSB営業部 課長の松澤氏だ。

SBとは「Solution Business」の略。その名の通り同社SB営業部の役割は、コンピュータゲームをはじめ、同社がゲームメーカーとしての長い歴史で培ってきた豊富なアミューズメントコンテンツの資産を、対法人の分野でも活かすことにある。

同社本来の「消費者に直接コンテンツを売る」という業態だけでなく、「法人向けソリューション」としてコンテンツを提供するSB営業部は、最近になってできたばかりの部署である。「1999年にiモードがスタートして、すぐの時期から携帯コンテンツを手がけてきますが、消費者向けサービスをやると同時に、法人にもサービスするということについては、"パイの食い合いになる"という異論も社内ではありました」と松澤氏は語る。「しかし、対法人ビジネスは、自社がやらなくてもどうせ必ず他社がやる。ならば積極的に討って出るべき、と社内を説得しました」という発言からは、コンテンツ業界で長年営業畑を歩んできた同氏の強い確信が感じられる。

タイトーは、現在「ボーダフォンライブ!」向けだけでも合計で14サイト、アプリにして74タイトルのゲームを配信している。(2003年12月現在)その中には往年の名作「スペースインベーダー」や、「電車でGO!」など、誰でも知っているタイトルも含まれる。こうした豊富なゲームアプリ資産を活かすために、同社は今年7月より「DiRECT」という対法人サービスを開始した。これは、企業が販促に用いる携帯アプリをASPサービスとして提供するものである。

DiRECTは、7月のリリース当初にはまだ3キャリアすべてに対応できなかった。"ただしJ-フォンのアプリを除く"という但し書きが入っていたのだ。しかし、今ではボーダフォンが消費者向け公式アプリだけでなく、DiRECTのような対法人サービスでもアプリを配信できる状況が整ったため、3キャリアすべてに対応できるようになったのだという。

DiRECTは、6つのジャンル(ゲーム、時計、スライドショー、着メロ&待受画像、ムービー、カラオケ)から成り立っているが、6ジャンル中3ジャンル、ゲーム、時計、スライドショーの3つがアプリを用いたものとなる。いずれも、ある程度フォーマット化されたシステムを用いるが、販促を行いたい企業のロゴやブランドネームなどを簡単に挿入することができ、企業がコンテンツを企業が一から開発するのに比べてずっと安価に、デジタルノベルティの配信を実現できるという。

今まで、ネット広告代理店などの認識では、一般に、「アプリは企業のノベルティとしてはダメだ」と考えられてきた。要するに、アプリでは携帯ユーザーの全員に配信することができないので、消費者に対して「サービスの機会均等」をある程度以上保証しなくてはならないノベルティ手段としては適切でないと考えられてきたのだ。しかし、松澤氏によると、そうした認識は、現在、急速に過去のものとなりつつあるという。「弊社独自のアンケート調査でも、"ノベルティとして何が欲しいか?"という設問に対しては、男性よりもむしろ女性の方がゲームアプリを求めているということがわかりました(松澤氏)」一般に、男性に比べ、女性は、ゲームアプリに対する要求がそれほど本格的ではないのだという。「男性は、お金を払ってでも本格的なゲームアプリを志向する場合が多いですが、女性の場合はむしろ、着メロなどを無料でもらうより、気軽に楽しめるゲームをノベルティとしてもらえることを喜ぶ傾向が強いのではないでしょうか(同氏)」

「老舗ゲームメーカー」という看板も手伝ってか、同社には特に、こうしたゲームアプリをノベルティとして使いたいのだが、という企業からの問合せが多いのだという。すでに大手通販会社や飲料メーカー数社と、ノベルティとしてゲームアプリを配信するプランも進行中とのことだ。また、冒頭の松澤氏のコメントにもあるように、ノベルティとしてアプリを配布するためには、「3キャリアすべてに対応」が必須条件であるという。アプリ対応の携帯電話が3キャリアで4000万人の大台に近づき、3キャリアすべてで、「ASPサービス」として配信できる体制も整ったことで、販促を行いたい企業のアプリに対する意識を急激に変えているようだ。

こうした状況を追い風として、タイトーは、2004年を「販促用の携帯アプリが本格的に普及定着する年になる」と位置づけている。「企業が販促をしたい商品やサービスに関連性、親和性のあるジャンルのゲームアプリを配信することで、ブランドや商品の訴求効果は高まるだろうと見ています(松澤氏)」

さらに同氏は続ける。「過去に、こうしたゲームアプリの分野では、技術的な基盤が確かでないベンチャーなどが、自社の公式サイトで配信していたゲームが売れないので、安易にノベルティに転化するというパターンが少なからずあったようです(同氏)」それが、販促をしたい企業に対して、アプリのイメージを傷つけるなどマイナスのイメージを植えつけてしまったことも確かに否定できないだろう。「しかし、これからは、クオリティを維持した上で適正な利益を確保し、その上でフェアに競争するという健康な市場のかたちもできてくると期待しています(同氏)」というコメントからは、アミューズメントアプリ市場に対する、同社の強い確信と決意が感じられた。



「僕はもともと営業出身だったこともあり、どちらかというと製作より、今のソリューションビジネス営業の方が肌に合う」と語っていたタイトーの松澤課長。確かに、営業マンらしいジョークも交えた軽妙なトークは、20分間という比較的短い講演タイムの中で、十分に聴衆にアピールしていたようだ。数千億円ほどの規模を持つといわれるプレゼントキャンペーン市場の20%程度を、携帯アプリ業界で取りたいとの同社の目標も披露された。

セミナーではあまり語られることはなかったが、事前インタビューで松澤氏は特に、「業界の健全な形成と発展」を重視しているように感じられた。「公式サイトで質の低いゲームアプリを配布してしまい、結局は収益を維持するためにノベルティとして、『転売』してしまう会社がいる(松澤氏)」というように、一部の企業に対しては、「質の低下と価格破壊、そしてノベルティアプリ分野の健全な成長を阻害する」とチクリと皮肉る一コマも。さまざまなアミューズメント産業の浮沈を見てきた老舗の同社らしい発言だ。(取材・文:三田隆治)

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